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これはrina OKAZAWAによるウェブ上の連載小説「NOLA」です。
/ only in japanese, sorry.
どんどん上に積層していく文章です。できるだけさかのぼって読むと面白いと思います。でも、読み方は基本的には自由です。 現在のはじめページ: 一番下からどうぞ

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のら は言った (らしい)

わたしは占い師でもないし預言者でもないよ。

頼まれるから、こうやって相談を聴いてるけどさ…。それはみんなが友達だからだよ。
わたしはただ、みんなの悩んでる顔をみたり、話を聞いたりしていて、こうなればいいな、とか、こうすればいいんじゃないかな、と思ったことをそのまま言っているだけなんだよ。

そのわたしをあなたが信じてくれたから、あなたの願いが現実に近づいたんじゃないかな。
あぁ、わたしの言葉に従うんじゃなくて、わたしを信じてくれたんだね。
それは素直に嬉しいな。でも、期待を押し付けないで。

わたしがあなたを救う、なんてことは無いんだよ。

だから、わたしは供物じゃないんだってば。
そんな目で見ないで。

のらのノートより抜粋

これからこうなるな、ってぼんやり思った事が、やっぱりそうなった、っていうことが多すぎて、
先に言ってあげたら良いのかな、って。

前兆を、
記述していく

って先生が言ってたの、この事なのかなって。今更気付くとか、ごめんね先生。

でも。
きちんとした言葉をもたない私が、どうやってやればいい?

踊る事が出来たらいいのに、とちょっと思う。
へたくそな言葉でやるしかないのかなぁ。

僕は、

あなたは太陽のように大きな笑顔で、飲み食べ笑い快活に生きて、たくさんの子を産み育てる強い強い母になればよい、と言ったあのまぶしい朝を忘れない。
そうだねえ、と屈託なく笑ったあなたの顔を僕は忘れない。

陽に照らされて美しく荒々しく飛び込んで来る、君の顔や体を、つかみたい、と思った。
君はあのとき、たしかに、僕の目の前に、いたろう?

僕は何を間違えたのだろう。

いつも、姉にとられる

「おねえちゃんは、いい人でいたいんだ」と言ったら、無言で目に大粒の涙を溜めて私を睨んだ。そういうところだよ、あなたの不徹底さは。と言おうと思ったが、また泣かれるのでやめた。

のらのノートより抜粋

どうやって失うのかを教えてほしい、
そしてわたしをひとりにしないでほしい

独白

頭ではすぐに分かるけど、本当に納得するまでにはとっても時間がかかるんです。
むしろ、そのボンヤリした感じを大事にしたいとすら思うんです。

なかなか乾かない傷口を外気にさらし続けるようなそういう…

のら は言った (らしい)

(今日はタロット風にいってみようか…)

信じて、崩れて、またはじめから。
積み上げて、また崩れて。

言葉はまったく堅牢ではないのだから、
確実でない物を信じないあなたは、黙って寝ていなさい。
寝ている事に意識を持っていきすぎないように、優しく目を閉じて。

いずれ善き人が、貴女を懐かしい友のようにはじめて呼びかけるまで。

独白

僕の顔、そんなに見ないで

クニエさんは目をこすりながら小さく「ん」と言った。

その上気する頬に、細かい粒子がとりまき、薄く光っているのを僕は見た。

ー 夢を見たの。

ー どんな?

僕らはそうして乗り換えた。

独白

声が返って来ると思わなかったから、あたし嬉しかったの、でも地面がぐらぐら揺れたの。

いろんな事に飽きた、なんて。あたしは嘘をついたのかもしれない。
違うの、逆なの。いろんな事をはじめて知ったの、見てなかったの。

圧倒的なものを差し出されて、あたしは逃げたのかもしれない。
あんなに聴きたいと思っていた音だったのに、急にこわくなって。
君の声を引き受けたい、と 思えば思うほど、あたしが消えていくような気がして。

また建て直す。
もう少し時間がたてば、きっと勇気がわいて、出来る気がするの。
そのときは、君にそれを見てもらいたいと思ってるよ。

今、君にそれを伝えられる手だてはないけれど、そう考えている事を分かってもらいたいなと思う。

ねぇ NOLA、あたしは理由もわからず泣いているよ。
ねえ!

89×127mm (現像 2)

私は、見た。

オーストラリア ウルルの空は深く濃く青い。
新疆ウイグル自治区 タクラマカン砂漠の地平線は遠く浅く白い。
台東区上野 田中さんのところの花壇はパンジーとチューリップが満開。

フィルムを現像するために薬液に通していく機械音。
画面のサムネイルを確認して、RGBを足す/引く。うちみたいな路面店で受け付けるフィルムは、たいてい露光が合っていない。私はフィルタを組みあわせて画面を適切な色調に調整していく。

R+3、Gー2。K++。とんとんとんつーつーとんつーとん。
リズミカルにパネルボタンを押す。25枚のフィルムに独自のリズム。
私は世界の色を正す。
機械音。
ぱさりとトレイに落ちる印画紙。適切な色の世界。
その瞬間、私は撮影者の目を乗っ取る。

私には、もうどこにも無い世界を旅する特権を与えられている。
私の目は方々へと飛ぶ。ナイアガラの水滴ひとつぶへ、道頓堀のきらびきへ、安生病院の新生児室へ、アルプス山脈の麓へと。
通風口からは酢酸の独特な香り。赤いエプロンの裾の「プロフォト」という文字がたなびく。

私の目はどんどん増えて分散し、世界をとりかこむだろう。そしていずれ、私の視たことのないものは無くなるだろう。たぶん。

印画紙に指紋をつけないかぎり、お客さんは自分の目を奪われたことに気づかない。
もちろん私は注意深くやる。
白い手袋は、さながら完全犯罪のための道具であった。


現像の終わった一本の長いフィルムのネガを巻きとり、ネガ袋に収納していく。機械でしゅるしゅるとまきこまれるネガが可愛らしく見えてくる。
7コマごとに断裁する、だん、だん、だん。私はこの作業が好きだ。

ライトボックスで印画紙とネガを照合し、スリップ封筒にまとめ入れる。
これで現像作業ワンセットが完了。

私は淡々と現像を続ける。
とんつーつーとんとんとん。つーつーつー。とんつーとん。
世界を覆い尽くすまで続く機械音。

そう、私はリズムで世界を把握しつつあったんだ、潜在的に言えば。

独白

堅牢なものが欲しい、わたしは確実なものを愛する。

乗り換えだよ

…クニエさん、起きて。

独白

ねぇ、スタティックなものって、無いの? 本当に?